きのこ狩りをやめて認知症になった祖母
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最終更新日:2014/01/13
みんなに聞いてほしい介護エピソード もの忘れ, 介護, 認知症
田舎に住む90歳を過ぎた祖母は多くのものを私たち孫に与えてくれました。
小学校の夏休みは1ヶ月間親元から離れ、いとこたち総勢7名と祖母の家で過ごしました。
海にも山にも近く、朝早くから夜遅くまで自然に囲まれての生活でした。楽しい思い出は私の宝物です。
さらに祖母が私に与えてくれたもの。思い浮かぶのは祖母から届くきのこの山盛り。
きのこがりに行きたいとせがんでも飼い犬しか連れて行かないと説明され不満に思ったものです。
大人になってからその犬は重要な役割をしていたと知りました。マムシ対策です。
先頭を歩かせて安全を確認しつつ、人間はきのこを探すのだそうです。確かに子どもがいては危険ですね。
年配者できのこがりが趣味の人を2、3人知っています。宝探しのような感覚でしょうか。
「きのこがりができなくなっからボケないように頑張っぺ」
昔から言っていました。
しかし、そのきのこがりの途中に足をくじいてしまうアクシデントがあり、身内から禁止令が出てしまします。認知症を患ったわけではないのに・・・どんなに残念だったでしょう。
電話口で私にも愚痴ることがありました。よほど悔しかったのだと思います。きのこを採取しては親戚にせっせと送って食べもらう。
祖母ならではの幸せだったのかもしれません。気力を失ってしまうのも理解できます。
きのこによっては決して食べてはいけない猛毒のものもありますから、採る側はかなりの神経を使っていたのでしょう。
その神経も脳への刺激だったのでしょうか。今思えばその頃から少しずつ認知症の症状が見え始め、もの忘れなどが顕著になっていきました。山を歩くこと、神経を使うことが同時になくなってしまったわけですから、認知症になったというのも理解ができます。
でも周りにいる人の言い分も分かります。
森の中で行方不明になったらそれこそたいへんですものね。
手芸や掃除などの趣味はありましたが、熱意の度合が違ったのでしょう。頼めば縫い物もしてくれましたが自分からはなかなか動きません。
認知症だけではなく、足腰が衰え、さらに認知症の影響で大好きだった孫の記憶さえ薄れていく祖母を目の当たりにすると切なくなります。
もう一度きのこがりをさせてあげたいな。かつて祖母の家で一緒に過ごしたいとことも話しますが、いつも答えはでません。
その埋め合わせ、というわけではありませんが、祖母の家に行く時は決まって上野駅できのこおこわを買って行きます。
「きのこ好き?」
聞くと認知症でもう私の顔も名前も分からないのですが、ニッコリ、きのこをもぎ取るしぐさをしてくれます。
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