はちみつで認知症の介護を決意
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最終更新日:2014/01/13
みんなに聞いてほしい介護エピソード 介護, 認知症
祖父は一人暮らしをしていましたが、認知症の症状が進み少々嫌がるのを説得して我が家へ迎え入れました。
初めの頃は認知症の症状が出ない日も多く、穏やかに新聞を読んだり近所を散歩したり、好きな相撲をテレビ観戦したりと思いのままに過ごしていました。
当時私は受験生でしたから祖父は遠慮している様子でした。居間でおおっぴらにくつろぐよりは、自分の寝室でのんびりしていることが大半だったように思います。
もちろん最初はお風呂も一人で入れました。しかし認知症が進むと体がふらついて危険なため、父が帰るのを待って母も加わり二人掛かりで入浴をさせていました。
受験とはいえ、最も大仕事である入浴をなぜ手伝ってあげなかったのだろうと悔やんでいます。
今なら迷わず手を差し伸ばすのに、勉強を理由に夕飯の用意ができるまで二階から降りて来ませんでした。
私たちをとがめるどころか、子どもたちには負担をかけまいと両親は力を合わせて認知症の祖父を介護していたのだと思います。今さらながら頭が下がります。
でも昼間は私の出番もありました。朝食後、父は勤めへ。母も何かと用事で出かけていましたので日中は認知症の祖父と二人になることがよくありました。
規則正しく食べるよう声をかけ、なるべく大勢で食事をするよう心がけていましたが、祖父はだんだん3度の食事が分からなくなっていました。
認知症の患者が食事をしたばかりなのに食べ物を要求するようになると目を離さないよう注意しなければなりません。
幸い私は受験生で家にいることが多く、祖父を見守る役目もしていたのです。
これは認知症ではよく見られる症状で、物忘れがひどくなり空腹感や満腹感をつかさどる中枢神経の異常と言われていますが、異常と言うよりは子どもに返ったように見えたのは私だけでしょうか。
目を盗んではちみつをなめている祖父を見付けた時は、
「こら、だめよ!」
と言いながら笑ってしまいました。
はちみつだか水あめだかを内緒で食べる一休さんのお話を思い出したからです。
そのことを母に話したら大笑いしました。父に話したらあきれながらも祖父には何も言いませんでした。
その一件から家族一同、改めて覚悟を決めたように思います。はちみつは我が家の認知症介護のキーワードになりました。
子どもに返ったと思えばいいのよ、と。
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