90歳までところてんを作っていたおじいちゃん
知り合いのおじいちゃんの話です。そのおじいちゃんは90過ぎまでひとり暮らしをしており、一人で朝早くから、ところてんを作り、バイクで売りにいていました。
その手作りのところてんはとても美味しく、お客さんにも評判とのことでした。
そんなある日、そのおじいちゃんが倒れてしまいました。
病名は、大腸がんでした。
腫瘍を切り取り、その日から人工肛門(消化管ストーマ、または消化管ストマ)の生活になりました。
その病気をきっかけにところてん屋さんを辞め、そのころから認知症の症状が出始めました。近くに孫さんがいたのですが、おじいちゃんの方が「まだ俺は元気だ!」と、同居を拒みました。
息子さん夫婦は転勤が多い為、県外に住んでおり、中々会えないのですが時々手紙をくれると言って見せてくれました。
段々認知症の症状が進み、早朝から近所を徘徊するようになりました。近所の人はまだ認知症の事は分からないため、「うろうろして怖い」と苦情が出始めました。
そんなある日です。近くに住んでいるお孫さんがバイクを買い、おじいちゃんに見せに来ました。するとおじいちゃんは「こりゃ太かバイクやなぁ。特にタイヤが俺の乗っとったバイクの何倍もあるばい。こりゃ気を付けて乗らんばいけんよぉ」とお孫さんを心配するのです。ちゃんとお孫さんを分かっているのです。
しかも、「俺もバイクに乗ってところてんまた作らないけんたい」というではありませんか。
毎日、早朝から徘徊していたのは、ところてんを作ろうとしていたからだったのです。ちゃんと分かっているのですね。
なんだかその話を聞いたとき、心がほっとしました。
皆様いかがでしたでしょうか。今後も定期的に「介護のおはなし」を更新していきたいと思います。
介護のお話は、皆さんの実際の体験を元に作成されているものです。皆様のエピソードも当サイトに掲載してみませんか?
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