手をぎゅっと握りかえしてくれたおば
【第6話】で登場したおばのその後についての話です。
息子さん夫婦はおばが原因ではないようですが、不仲になり離婚をしました。
家には息子さんと、おばの二人っきり。息子さんは昼間仕事をしているため近、くにいる娘さんや私の母のお姉さんなど交代でみていました。
しかし、みんな結婚して嫁いでいるため自分の家の事もあります。息子さんも仕事で疲れて帰ってきて、それからおばの面倒では身体がもたないとのことで、施設に預けることになりました。
アルツハイマーとは環境が変わると、一気に症状が進んでしまう場合や、少し改善するようば場合もみられるのですが、おばの場合は前者の方で一気に症状も進みました。とうとう一人では何もできなくなったのです。
紙オムツでないと排せつも無理ですし、食事も手は使えますが自分から食べようとはしないため、スタッフさんの介助が必要です。今までは少しぐらいはできていたことも全部介助が必要になったため、スタッフさんは本当に大変だと思います。
しかし、ありがたいことに、アルツハイマーはあるものの身体や内臓などの病気はなかったため足腰が元気で、目立った病気もしていません。ただとにかく一番大変なのは徘徊です。一時としてその場に居れないのです。座ったかと思えば立って廊下や部屋を歩いて回っているのです。夜中も同様で歩き回ってるとのことでした。
ある日心配になった私は、私の両親と私の母のお姉さん4人でおばのいる施設を訪ねました。
おばがいる階は閉鎖病棟というのでしょうか、入り口には鍵がかかっておりスタッフさんしか開けれないようになっています。その鍵を開けてもらっておばの部屋に入りました。
おばの姿はすぐわかりました。以前から聞いていたように歩き回っておりました。
声をかけると、「こんにちは」とは言ってくれますが誰かは分かってはいません。話しかけながらソファーへ案内するのですが、座ってもすぐ立ち上がってその場で足踏みをしたり動かずにいられないみたいです。
でも常に笑ってくれて周りから見れば会話は成立してないように見えますが、5人の中ではほっとした一時でした。
夕食の時間というので「じゃあ、帰るね。」と父が握手を求めたんです。
そしたら先ほどまで会話も成り立っていないように見えていたおばは手を握り返してくれ「ありがとう」と言ってくれたんです。
続いて私たちも握手をしてくれました。なんていうのでしょうか、手が温かかったのを今でも覚えています。そして帰り道、「あの握手の時は分かってくれてたんだよね」と4人で話して帰りました。
今でも変わらず元気に歩いているおばのお話しです。
皆様いかがでしたでしょうか。今後も「介護のおはなし」を更新していきたいと思います。
介護のお話は、皆さんの実際の体験を元に作成されているものです。皆様のエピソードも当サイトに掲載してみませんか?
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