成年後見制度と不動産
今回は認知症の進行によって、財産管理が困難になった方の、不動産処分についてのお話です。
実際にきた相談内容を例にして解説します。
家族であっても、不動産は売却できない
「父が認知症の症状の悪化で、判断能力が十分にはありません。有料老人ホームに入居しているため、月々かなりのお金が必要なのですが、貯金も底を突き、年金収入も十分にないため、父名義で購入した自宅を売却することになりました。
そこで不動産販売会社に相談したところ、父名義の不動産は販売できないといわれました。」
本人名義の不動産は成年後見制度を利用しないと売却できません。
回答:不動産を売却する場合には、その不動産の所有者(名義人)でなければ、売却できません。
さらに、不動産を売却して、その登記を申請する場合にも、登記官や司法書士などの資格者代理人による、売主の申請意志の確認が必要になります。
今回の場合、不動産の所有者であるご主人は、認知症の症状により、すでに十分な判断能力がなく、申請意志の確認が十分にできないと判断されるため、不動産を売却するには、成年後見制度を利用して、家庭裁判所から選任された成年後見人が、代理で売買契約を結ぶ必要があります。
成年後見制度は早めの申立てが必要
今回のように、医療・介護サービスの費用が払えない状況になってから、成年後見人の申請を行ったのでは、かなり厳しいと思われます。
なぜなら、成年後見人の申立てから、実際成年後見人が任命されるまでには、多くの場合2~3ヶ月程度の時間がかかってしまうからです。
ですので、医療・介護サービスの費用と資産を早い段階で正しく管理し、必要に応じて早めに成年後見制度を利用することが大事です。
関連記事
-
-
資産がなくても成年後見制度を使うメリット
資産が少なくても成年後見制度は利用すべき! 今回は、資産がない場合でも成年後見
-
-
成年後見人の財産管理のまとめ【成年後見制度のお話:第42話】
成年後見人の財産管理業務の種類 成年後見人の財産管理については、何度か当サイトでもお伝えしてきまし
-
-
成年後見制度と銀行取引
今回は、認知症で判断能力が低くなった方の銀行取引についてのお話です。 以下は実際に認知症の方の
-
-
成年後見人と本人の財産管理
今までのコラムの中で、成年後見制度の歴史、成年後見制度の種類などを書いてきましたが、今回からは、もう
-
-
後見が終了したら本人の財産はどうなるの?
後見が終了しても財産は後見人のものになりません 親族が成年後見人等になる際によく質問されることとし
PREV :
後見が終了したら本人の財産はどうなるの?
NEXT :
成年後見制度と銀行取引